· 

架空の温泉郷が必要だった理由

猫さんロスによる「悲しみや辛い苦しさ=グリーフ」に向き合うワークブック『ようこそ 猫又温泉郷』はその名の通り、温泉郷が舞台となります。

 

ワークブックを作る時に必要だと感じたのは、「心が和らぐこと、ここではない場所へ行って戻ってくるということ、ファンタジーの機能」でした。

 

実を言えば、猫くんが亡くなる数ヶ月前に、ウェブイベント『ペーパーウェル』(みんなで同じテーマで一斉に作品をネットプリント配信するもの)への参加作品として、人と猫が再会する場所の物語として、『猫又温泉郷へようこそ』というものを作っていました。この時は、猫くんが亡くなるとは全く予感もしておらず、いつかそういう日が来た時、また会える場所があったらいいなと想像した世界でした。

 

 

画像:ペーパーウェル05配信参加作品『猫又温泉郷へようこそ』『猫又温泉おみやげ栞』/2020年11月21日発行/著 かくらこう

ダウンロード
猫又温泉郷へようこそ
ペーパーウェル05配信参加作品
猫と再会する小さな物語です
猫又温泉郷へようこそ.pdf
PDFファイル 5.9 MB
ダウンロード
猫又温泉郷おみやげ栞
ペーパーウェル05配信参加作品
猫又温泉郷で買えるおみやげをモチーフにした切り抜き栞です。
猫又温泉郷おみやげ栞.pdf
PDFファイル 4.9 MB

何かしらの物語は内面や無意識の世界の旅だと、私は捉えています。

特にファンタジーは分かりやすく、無意識世界を映しているように思います。

子どもの頃、ファンタジーの世界から主人公が現実へ戻らなければならないラストに反発する心がありました。現実へなんて戻りたくないという気持ち。

自分で物語を書いていると、無意識を意識に持ち上げたり、登場人物の言動や行動から何かを得たりすることがあります。

物語の世界に入って行くことは、意識と無意識の境界を越えること。

こちらとあちら。

ここ数年になってやっと腑に落ちてきました。

物語・無意識・あちら側に足を踏み入れて、普段見えないなんらかの力を引き出して、現実へ戻ってくる。現実で生きるための力を得る行為なのだろうということ。

 

だから、ワークブックの舞台にはファンタジー世界が必要でした。

「主人公=ワークブックを行う人」が自分で何かを見つけて、これから先に携えてゆけるような、そういう本にしたいと思いました。

ちょっと魔法の本の部類かもしれませんね。大丈夫です、黒魔法ではなく、白魔法の領域です。

 

猫さんと再会する物語のファンタジーとして、以前に想像した『猫又温泉郷』は最適でした。

大切な存在を失った悲しみや辛さ、痛みと向き合うのは、癒しにもなりますが辛いことでもあります。

心がゆるむようなところ。あたたかいところ。猫さんも人間も神様に守られていると感じられるところ。

そういうイメージに当てはまりました。

旅立った猫さんが、今、どこにいるのかは、みんな感じる場所は違うと思うので、待ち合わせの場所としての温泉地でもあります。

猫さんは、お湯には浸からないと思いますけれど、ご馳走をお腹いっぱい食べて、気持ちいい場所でお昼寝もできそうですし。

 

『ようこそ 猫又温泉郷』の冒頭で、主人公(ワークブックを行う人)は、旅立っていった大切な猫さんからの招待状を受け取ります。

なないろ市猫町にある猫又温泉郷、その中の『またたび旅館』の女将が代筆する手紙です。

手紙には、招待状の他に、猫又温泉郷へ行くバスの切符も入っています。

主人公はガイドに沿って、切符を使って猫又温泉郷へ行き、猫さんとの思い出を振り返り、またたび旅館で猫さんと再会します。

こちらに戻ってくるまで、ガイドが主人公のワークに寄り添います。

ワークを終えると、主人公とその猫さんだけの本が完成します。

 

そういうファンタジーの温泉地が、誰かの役に立てたらいいなと、祈っています。


 A4サイズ 20ページ オールカラー

[発行予定]2024年2月22日

[価格]未定
[販売場所]おはなしの喫茶室STORES、minne、架空ストア and more